第壱拾弐話 変化ヴァンとロレッタの放った奇襲攻撃を、ものともせずに耐え抜いたネビス。 今は息も落ち着き、普通の言葉遣いに戻っていた。 「…私にこれほどの傷を負わせるとは、流石はブルン守護兵団のメンバー…といったところですね。」 ヴァンが、その様子見て慌てることはなく、冷静に今すべき事を考えていた。 (この女、どうなってる?人間じゃないのか?) ネビスが左胸から大量の血を流しながら言葉を続ける。 「…オヤ?なぜ私が死んでいないのかということに、さぞかし驚いているようですね。」 「…!」 「でも、私にばかり気が向いていては、長生きできませんよ?」 その意味に気付いたヴァンとロレッタが、咄嗟のところで振り下ろされたスウォームの爪による一撃を避けた。 さっきまで2人の居た地面が粉砕され、岩片があたりに飛び散る。 「…我ヲ忘レテモラッテハ困ル」 その様子をクスクスと笑いながら、ネビスは言う。 「ふふふ…もっと面白いものを、見せてあげますよ。」 ネビスが黒龍に振り向き、聞く。 「黒龍様、あの力の使用許可を。…3分でカタをつけてご覧に入れましょう。」 「…ヨイダロウ、何分デモヨイガ、使イスギハ後々面倒ダゾ」 黒龍から【力】の使用許可を得たネビスは、手に持っている槍で自らの傷口から流れ出る血を使い、その白き髪全体に染み渡るようにしてかけていく。 染み渡ったのを確認すると、今度は槍の刃の部分で自らの体を一刺しし、その刃に付着した血で足元に魔方陣を描く。 描いた魔法陣のくぼみに、ネビスから流れ出た血が魔方陣全体に染み渡っていく。 そして、何らかの呪文を唱えだすネビス。 「…我、混沌と破壊を齎す神の器にて、今より地獄の使者達のお力、お借りしてたまらわん…」 呪文を唱えていくたびに、ネビスの周りに熱気が篭り始め、槍の形状が序々に変貌していく。 「…!まさか、貴様っ!!」 その行動と変化に検討がついたのか、ヴァンが『ソニックブレード』を放つ。 ソニックブレードが直撃したと同時に、あたりにかなりの量の煙が撒き散らされる。 「…やったか…?」 その言葉を言った次の瞬間。 煙の中から、なにやら鞭のようなしなる物が放たれ、ヴァンの右頬を直撃し、パァンという派手な音をたてる。 衝撃が思ったより強かったのか、少し吹っ飛ばされるヴァン。 「ぐぁっ!」 「ヴァン!」 ロレッタが駆け寄ると、一撃を食らった頬に鋭い裂傷ができていた。 「…さぁて、反撃開始といきますよ…」 煙の中から、血で赤く染まった髪が腰まで伸び『インストラクター』と呼ばれる鞭を手にしたネビスが、こちらを見ていた。 ジャンル別一覧
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